仏壇にあげるお香といったら、線香に決まっています。

しかし線香の特有の匂いが苦手な人も、中にはいるのではないでしょうか?

同じ仲間に属しているのだから、線香ではなくて部屋でくらすためのお香を代わりに仏壇にお供えしても良いのでは、と考える人もいるでしょう。

確かに上質なお香をお供えした方が、もしかしたら仏様も喜んでくれるかもしれません。

ここでは、仏壇に線香ではなくお香を供えてもよいのか、という疑問に対する回答を中心に、仏壇に線香(お香)をあげる意味や、あげるときの注意点を説明します。

仏壇では線香じゃなくてお香をあげてもいいの?

お香 仏壇 使い方

基本的に、お香は香りを楽しむもので、線香は仏事に使うものです。

でもお香と線香の作り方に違いはありません。

両者の違いは形だけで、お香を形にまとめるときに、細く長くまとめたものが線香というだけのことです。

しかも、最近はお香と線香の境目があいまいになりつつあります。

現在は伽羅(きゃら)、沈香(じんこう)、白檀(びゃくだん)など、線香のための大切な原料になる香木の値段が高騰し、各メーカーは仏事用の線香にも合成香料を使わざるを得ない状況になっています。

しかも線香自体変化しています。

昔どおりのおなじみの匂いのものだけでなく、合成香料等を使って桜、ラベンダー、ローズのような花の香りはもちろん、珈琲や紅茶のような飲食物の香りまで、さまざまな匂いをつけた線香が市販されるようになりました。

これも古い習慣と現代生活をマッチさせる知恵なのかもしれません。

そしてこれらの線香は、同じように合成香料を利用して作る、カジュアルなお香と実質的な差がほとんどないのです。

その一方、天然の材料だけを使った高級な線香を焚いたときの香りはすばらしく豊かで、同じくらい高級なお香と同じように、良い香りがします。

人によってはこの上等な線香の香りが気に入って、お香のよう利用する人もいるくらいです。

したがってその逆に、自分の好みの香りのお香、あるいは故人が好みであった香りのお香を、線香の代わりに仏事に使ったとしても、全く問題がありません。

スポンサードリンク

仏壇のお香をあげる意味とは!?なぜお香を炊くの?

私たち(少なくとも仏教徒の場合)は、仏壇の前に来ると何の疑問も感じずにお香(線香)をあげます。

しかし「お香を焚く」ことには、宗教上どのような意味があるのでしょうか?

そもそもお香の文化がインドから伝わったのは、仏教伝来とほぼ同時でした。

大陸経由でインドからやって来た仏教自体にも、花を飾り、灯りをともし、香を焚いて清めるという儀礼がありました。

それは形を変えながら、今日の日本の仏教の習慣にも定着しています。

それでは「お香を焚く」という行為は、仏教にとってどのような意味があるのでしょうか?

ひとつはお香の香りを、他のお供え物(ロウソク、お花、ご飯、お水)と共に仏様や亡くなった方々に楽しんでもらう、という意味があります。

特に人が亡くなってから四九日が過ぎるまでの間、魂はこの世をさまよいながら次の世に生まれ変わるまでの旅を続けていて、お香の煙だけがその間の食事(香食、こうじき)になるそうです。

また仏教には、お香の煙を通じて、故人へ自分の気持ちを伝えることができるとされています。

お香を使うことで、亡くなった人たちと会話をすることができるのです。

それだけではありません。

もうひとつ、お香には大切な意味があります。

お香の煙を浴びることによって、拝む人の心身を浄化する効果があるといわれているのです。

私たちは日々雑々とした生活を送っています。ついうっかりと、他人の悪口を言ったりすることもあるでしょう。仏様やご先祖様と向き合う前に、この世の垢にまみれた心身を、お香の香りを嗅ぎ、その煙を浴びることで心身を清浄にする必要があるのです。

スポンサードリンク

仏壇でのお香の使い方とは!?

お香 仏壇 使い方とは

お香あるいは線香をフレグランスとして楽しむ場合には、安全に気を使う以外に、特別な注意点はありません。

しかし同じものを仏壇に供える場合には、気をつけないといけない作法がいくつかあります。

うっかりマナーを忘れて気恥ずかしい思いをしないで済むように、覚えておくと便利です。

お香(線香)を上げるには、軽く一礼して、マッチかライターでロウソクに火を灯すところから始めます。

お香に火を付けるのは、このロウソクです。

ロウソクの火をお香に移して、空いた方の手であおいで火を消します。

口で息を吹きかけて火を消すようなことは、絶対に行なってはいけません。

口は前述のように他人の悪口を言ったり、汚い言葉が飛び出したりと、悪行を積みやすい汚れた場所なので、仏様に供える火を消すためにふさわしい場所ではないのです。

お香を香炉に立てるときは、宗派ごとに微妙に違いがあるので気をつけて下さい。

おおざっぱにいって、天台宗や真言宗の密教系の宗派では、3本のお香を香炉の中に逆3角型になるように立てます。

日蓮宗ではお香1本だけを香炉の中央に立てます。

曹洞宗や臨済宗の禅宗系の宗派も1本でよいようです。

他の宗派はおおむね1本から3本のお香を香炉の真ん中にまとめて立てればよいです。

ただし宗派ではなく、地域や家の伝統によって、お香の立て方が異なる場合もあるので、

普通の場合はそれほど気にする必要はありません。

どうしても気になる場合は、その家の人にやり方をたずねたり、単に真似をするようにすればよいでしょう。

しかし浄土真宗の場合だけは注意をする必要があります。

他の宗派ではすべてお香を香炉に立てるのに対して、浄土真宗の場合は、お香1本を2〜3本に折って、香炉の灰の上に横に寝かせるからです。

逆に家の宗派が浄土真宗で、横にお香を寝かせる方法に慣れている場合は、他の宗派の家の仏壇の前では、気をつけなければなりません。

また、お香をあげるときにお鐘(りん)をやたらと鳴らす人がいますが、これは間違っています。

お鐘は読経などお勤めをするときに使う道具です。

したがって、お香をあげるだけなら、お鐘を鳴らす必要は特にありません。

まとめ

仏壇に線香の代わりにお香をあげても全く問題はありません。

もともとお香の文化は仏教と同時に日本にやって来たものだし、そのころは扱いやすい線香など存在しませんでした。

したがって仏様にお香をあげたいと当時の人が考えたとしても、今日とは違ったやり方と作法であげていたに違いありません。

しかし今日では、お香を線香の代わりにあげる場合も、線香に準じたやり方でお供えする方が無難でしょう。

でも一番大切なのは、お香の香りを通して、仏壇の向こうの仏様やご先祖様に語りかけようとする精神であることは、いうまでもありません。

スポンサードリンク